2004-01-01から1年間の記事一覧

「おしまいのページで」−文藝春秋 編−

意図していたわけではなく、この時期に偶然に手に入れただけに過ぎないのだけれど、今年最後の雑記が雑誌「オール読物」の最後のページに数人の作家によって連載されていた随筆をまとめた「おしまいのページで」で終わるのはなんだかいい感じのようなような…

「銀座十二章」−池田弥三郎−

銀座で三代続いた天ぷら屋「天金」に生まれた著者が、自分の経験を元に銀座の街の変遷をつづった本。年末になると銀座や浅草の昔のことが書いてある本を読みたくなってしまうのはなぜだろう。でも正直言うとこういう本を読んでいても地理的な関係あんまり分…

「新版 大東京案内(上)」−今和次郎−

気がつけば歩いていると誰も彼もがサンタの格好をしているのでは、と思うくらい、吉祥寺だけでなく富士見ヶ丘駅前の通りをサンタの格好をした女の子が走ってます。セブンイレブンか牛角の店員だと推測されるのだけれど、コンビニでわざわざ店員がサンタの格…

「わが女房教育」−永井龍男−

なんだか仰々しいタイトルではありますが、内容は、結婚6年目の永井龍男が「今日こんな人を見たよ、でも君にはそんな風になって欲しくないね」とか「たまには君も気分を変えてみるのももいいよ」という、妻への手紙、といった趣の短い文章を集めたもの。文…

「井伏鱒二文集3 釣りの楽しみ」−井伏鱒二−

いくら釣りに興味がない人にもおもしろく書かれているといっても、この厚さで全部釣りの話というのはちょっと食傷気味になってしまう(文字は大きいが)。ましてや岩波から出ている「川釣り」と同じ話も多く収録されてるし・・・・。個人的には半分くらいに…

「京都のこころ A to Z−舞妓さんから喫茶店まで」−木村衣有子−

木村衣有子の「京都カフェ案内」を新幹線の中で眺めながら、京都に着くなり六曜社に行き、まる捨、進々堂、エフィッシュ・・・・などのカフェを回りつつ、京都の町を散歩したり、神戸に出て雑貨屋さんや本屋さんを巡り、南京町を歩いたのは、いつのことか、…

「雑文集 夕ごころ」−永井龍男−

「3ガ日の、雪の降るような冷え込む夜には、随分遠くから横須賀線の踏切の警鐘が聞こえてくる。ああ、あそこの踏切だろうと思うと、闇の中に真っ直ぐ線路が見えてくる。どこかへ出かけるつもりになれば、まだどこへだって行けるのだなと思ったりすることも…

「前途」−庄野潤三−

一言でいうと“戦時下の青春日記”。 でも悲壮感や苦しみが描かれているわけではない。20代はじめのどの世代にも共通した無為の日々やいらだちみたいなものが、毎日、友達と自分の好きな作家などについて語り、本を貸し合い、同人誌の計画を立て、ビール園に飲…

「リリパット ヴァルター・トリーアの世界」−ヴァルター・トリーア

ケストナーの「エミールと探偵たち」などの挿絵でおなじみのヴァルター・トリーア(ついくせでワルター・トリアーと言ってしまう)が、1937年から12年間約100冊、描き続けたイギリスの雑誌「Lilliput Magazine」の表紙を中心に、イラストや古い絵本を紹介し…

「井伏鱒二対談集」−井伏鱒二−

対談相手は、開高健、永井龍男、丸谷才一、河盛好蔵、尾崎一雄・・・・名前を眺めるだけでこの二人がどんな話をするのだろう、わくわくしてしまう人選は偶然と言うより必然か。でも井伏鱒二が開高健と対談して、一方で木山捷平が山口瞳と対談してる、だから…

「東京のうまいもの−散歩のとき何か食べたくなって」−池波正太郎−

こんな本を読んだせいで週末は浅草とかのんびり歩いてみたいなぁなんて思っていたら、熱を出して寝込んでしまいました。土曜の夜に雨の中、家に帰る途中、寒気がして歯がカタカタするのでおかしいと思っていたら、39度もあって、そのまま日曜、月曜と寝込む…

「山椒魚」−井伏鱒二−

この作品の題名を初めて目にしたのは、おそらく中学くらいの国語の授業だったような気がする。でもまさか自分が読むなんてことは想像もしてなかったね。この作品に限らず井伏鱒二の作品は、10代の頃に読む本ではないような気がするな。名作とか名著とか呼ば…

「ku:nel」(Vol.11/2005.1.1)

まず昨日書き忘れたことから。以前、この日記で山口瞳と永井龍男の2二人に接点はなかったのだろうかということを書いた。2人は同時期に鎌倉に住んでいたようだし、お互いの文章を読んでいると川端康成など同じ人物と交流があったことが書いている。加えて…

「新装版 諸君!この人生、大変なんだ」−山口瞳−

この本も山口瞳の中ではちょっと敬遠してました。それなのにちょっと読み始めたら止まらなくなってしまった。いちいちうなずきながら読んでしまうのは、多分、これまで山口瞳の本を読んできて、彼がどんな葛藤を抱えていたのか、どんな風に自分の仕事を行っ…

「かきつばた・無心状」−井伏鱒二−

「無心状」については、ちょっと前に単行本で読んだのでここにも書きましたが、ここに収録されている作品とそれほど重なっているわけではない。解説を小沼丹が書いているというだけで私にとってはうれしい。積極的に探しているわけではなかったせいもあり、…

「阿佐ヶ谷日記」−外村繁−

昭和32年末に上顎腫瘍が発見され癌と診断され、昭和35年には妻てい子が乳癌の手術を受けるという夫婦そろって癌におかされてしまう状況で、庭の自然の移ろいや、前妻との五人の子供達のこと、老いた母のことなどを綴った日記。昭和35年9月から昭和36年7月ま…

「ペンの散歩」−尾崎一雄−

昭和50年から52年にかけて書かれた下曽我での身辺雑記。 私は小学校から大学まで二宮に住んでいたので、ここで書かれている土地とは近いのだけれど、行ったことはない。曽我といえば梅林が有名だけれど、若いときはそんなものには興味ないし(今でもないけど…

「箱根山」−獅子文六−

箱根の山を巡って道路や鉄道、バスなどの交通手段、旅館など観光客を目あてにした勢力争いを描いた、朝日新聞に連載され、後に川島雄三監督によって映画化された小説。はじめのシーンから大臣による反目しあう2つの会社の公聴会など、どこか緊張感を与えつ…

「交遊録」−吉田健一−

交友録というと、たとえば早稲田や東大仏文といった出身校、あるいは阿佐ヶ谷、鎌倉といった居住地、同人誌仲間・・・・など、ある特定のサークル内での交友が主なものになってきたりするものだけれど、吉田健一についてはそういうサークルがどうも思い浮か…

「ヴォルフガング・ティルマンス写真集」

Taschen刊行の「Wolfgang Tillmans(1995)」と「Burg(1998)」の2冊を合本にしたお買い得な写真集。しかも2900円。先週、見に行った展覧会で見つけて、せっかくだからタワーブックスで買おうと思ったいたのだ。お得だけれど、表紙もそれほど厚くないし読んで…

「湖沼学入門」−山口瞳−

東北に向かう電車の窓から一瞬見えた沼の風景にひかれて、あんなところでゆっくりと絵を描けたらいいな、と思ったことから実現した企画で、山口瞳とドスト氏こと関保寿が全国の沼、湖などを巡りつつ絵を描く様子を綴られていく。 といっても緑や水辺がきれい…

「五代の民」−里見トン−

里見トンの随筆の言い放つような書き方が気に入っている。でも「極楽とんぼ」も「多情仏心」も「安城家の兄弟」も「善心悪心」も「今年竹」も「道元禅師の話」も読んでない私ですが・・・・。いったい私は里見トンのなにを読んでるのやら。結局なにをやるに…

「ジョン・クレアの詩集」−上林暁−

自分で言うのもなんだけれど、渋い本ばかり読んでるなぁ。というより執筆時の平均年齢が高すぎ!この本もあとがきで書かれているように上林暁の25冊目の本で60代後半、70歳目前の作品集です。いや単に若いときの本が見つからなかったり、見つかっても高かっ…

「歳月−安藤鶴夫随筆集」−安藤鶴夫−

安藤鶴夫は、芸能記者として都新聞、東京新聞などに文楽、落語、演劇評を執筆しながら、贔屓にしていた芸人についての芸談物を発表した作家で、講談師、桃川燕雄を主人公にした「巷談本牧亭」は、第50回の直木賞を受賞しています。私は落語などの下町の芸能…

「秋日和」−里見トン−

タイトルですぐに分かるように小津安二郎によって映画化された物語の原作。といっても、小津安二郎と里見トンが一緒にストーリーを考えた後、それぞれで小説化、映画化を行ったという話をどこかで読んだことがあります。 「秋日和」のほかに死んでしまった昔…

「遥拝隊長・本日休診」−井伏鱒二−

初めての暗室作業。前に書いたように新しい写真を撮れなかったので、朝起きて古いモノクロ写真を探してみたのだが、ない。アルバムに入っているのはカラーばかり。結局10年近い前の写真を持っていく。 横浜の梅香亭や喫茶ブラジル、中華街の小さな店・・・・…

「灰皿妙」−永井龍男−

今日から11月3日まで、神保町で「神田古本まつり」。今日なんていい天気だったし比較的暖かかったし、神保町を歩いたらいい気分だっただろうなぁ、なんて思う。でも会社休んでまで行くほどでもないわけで・・・・。去年は曇り空の中、夕方から行ったにもか…

「山の手の子町ッ子」−獅子文六−

今度の日曜日に写真美術館で行われるモノクロネガをご自分の手でプリントするというワークショップに参加するので、ひさしぶりにモノクロのフィルムなんて買ってきて張り切っていたのだけれど、OM1には入れたばかりのカラーフィルムが入っていたり、それさえ…

「井伏鱒二文集2 旅の出会い」−井伏鱒二−

もう10月も終わりに近くなってきましたが、多摩川の河川敷でバーベキューをした。13名、前はみんな同じ会社に勤めていたので、日程などもすぐに決められたのだけれど、バラバラになってしまうとなかなか難しい。加えて千葉の稲毛海岸に住んでいる人から神奈…

「行きつけの店」−山口瞳−

「行きつけの店」というタイトルではあるけれど、料理のことはあまり書いていない。お店の主人や一緒に行った人とのとのやりとりが多い。だから文字どおり行きつけのお店を紹介するのではなく「私はこうやってお店の主人とつきあい、そこから学んできた」と…