2004-01-01から1年間の記事一覧

「駅前旅館」−井伏鱒二−

ついに新潮社文庫の井伏鱒二に手を伸ばした私です。上野の駅前旅館の番頭が、昔の番頭のしきたりや気質などを含め、自分たちについてのことを語るスタイルの作品。がさつさと繊細さが同居した番頭たちの生き方がストレートに描かれていてます。繊細さが後ろ…

「私の食べ歩き」−獅子文六−

続けてこんな本を読んだから、というわけではないけれど、金曜日の夜は早めに会社を抜け出して家の近所の牛角で焼き肉を食べた。メニューの切り替えにあわせて半額になっていたいくつかのメニューを中心に注文したので、お腹いっぱい食べて二人で2800円。ま…

「東京の空の下オムレツのにおいは流れる」−石井好子−

最近、夕ご飯をサンドウィッチやそばですませてしまっているせいか、なにかおいしいものが食べたい気分。そんなこというとまわりからいろいろと言われそうだけれど、“おいしいもの”というより“しっかりしたもの”に変更しておきます。 そんなことを思いつつ会…

「コレクタブル絵本ストア」

いろいろ調べたり足を棒にして本屋を巡ったり、外国にしょっちゅう行ったりして、欲しい絵本を一冊ずつほどお金もスペースもないし、ついレコードとか小説とかいろいろなものに手を出しつつそのどれに対しても中途半端、小学校の頃から飛び抜けて成績の良い…

「埋れ木」−吉田健一−

気がつけば今年最後の3連休もおしまい。雨ばっかりで何もしなかったような、ちょこちょこと動き回ったような・・・・。いや土曜日はほんとに風と雨がひどくて、髪を切ったほかはほとんど家にいたし、台風一過で28度まで気温が上がるといわれていた日曜、月…

「井伏鱒二文集1 思い出の人々」−井伏鱒二−

今日読む本がないというときか、好きな作家の新刊以外は、ふだんほとん新刊を買わない私ですが(画集とかは別にして)、珍しく12月までの間、井伏鱒二のこのシリーズをきちんと買ってみようと思っている。1カ月に一度の楽しみ。第2巻の「旅の出会い」もも…

「江分利満氏の華麗な生活」−山口瞳−

話の内容はずれますが、「ku:nel」を読んでいると「東京を離れて田舎で暮らすのもいいかもなぁ」なんて思ってしまう。「贅沢しなければなんとかやっていけるんじゃないかなぁ」なんて無理か。なんも技術も持ってないしね。いや、もうその地元の工場とかお店…

「ku:nel」(Vol.10/2004.11.1)

金曜日遅くまで遊んだせいで(水曜から木曜にかけて始発まで会社にいたせいもあるかな)土曜日はなかなか起きれず、ちゃんと目が覚めたのは12時過ぎ。 日曜日が一日中雨が降って何もできなかったのを考えると、せっかく晴れたのになんてもったいないことをし…

「けっぱり先生」−山口瞳−

山口瞳の本にしてはストレートな作風で、ひとりの校長先生を軸にその学校で働く先生たち、新聞記者の照れのないストーリーと「教育とはなにか」という主張を熱く語っていってます。主人公≒山口瞳ではない分、物語自体の膨らみが出ているかな、という気もしま…

「巻頭随筆III」−文藝春秋 編−

この本とは全然関係ありませんが、ちくま文庫から井伏鱒二の随筆を集めた本が出てます。全4巻。「忘れ得ぬ人々の面影」とサブタイトルがついた第1巻はもう出ていて、10月に第2巻「旅の出会い」が出るみたい。 それにしてもちくま文庫も講談社文芸文庫も普…

「無心状」−井伏鱒二−

無心状というのは、地方から出てきた学生などが、月の生活費が足りなくなったため、お金を送ってもらうために実家に出す手紙のこと。 ここではお金が足りなくなった井伏鱒二が、普通に書いたら怒られるだけなので、もっともらしい理由や状況を作り上げて実家…

「御代の稲妻」−庄野潤三−

学問や研究のためではない読書なんてけっきょくの話、単なる現実逃避にすぎないわけで、10代20代の私にとって読書、あるいは本というのは「ここではないどこか」に連れて行ってくれる最適な道具だったような気がします(ある意味音楽を聴くとか、映画を見る…

「Peep Paper Vol.2」−トリトンカフェ・パブリッシング−

トリトンカフェは神戸にあるカフェで、2年くらい前に一度だけ行ったことがあります。開店と同時に入ったせいもあってお客さんもほとんどいなくて、比較的広い店内にアンティークっぽい木のテーブルと椅子がゆったりと置かれていて、居心地の良いカフェだっ…

「巻頭随筆II」−文藝春秋 編−

先日、中央線巡りをしたときにIIとIIIを手に入れたので、これで巻頭随筆も4冊そろったことになる。実際は6まで出ているのだが、5と6は1980年代も後半になってくるので今は読む気はなし。もしかしたら何年かして読みたくなるときがきて、そのときになった…

「Summer Store −Last Summer Holiday−」

「Summer Store」はディモンシュに行くたびに買っていて最初の号から持っているし、夏のイベントにも初めのときから行っていたのだけれど、去年の夏の最後の時には行けなくてこの最終号も手に入れそびれてました。その後も鎌倉に行く機会がなかったので、1…

「田中一光」

このギンザ・グラフィック・ギャラリーのシリーズも気がつけばもう10冊くらいになってます。気持ち的にはもう少し大きな判でページ数もあって3000円くらいだといいのにな、と思う。でもこういうデザイン関係の本で3000円くらいの本って以外となくて、たいて…

「片岡義男 本読み術・私生活の充実」−片岡義男−

架空のインタビューで、どんなところで本を読むか、最近おすすめの本はなにか・・・・といった質問に片岡義男が答えるという形式で書かれているのだが、質問の内容があまりにも次の話題にうまく持っていくための導線になっているので、読んでいるとちょっと…

「居酒屋兆治」−山口瞳−

「礼儀作法入門」「居酒屋兆治」「血族」「家族」「人殺し」、そのほか競馬、将棋関連・・・・これらは、山口瞳の本で後回しにしようと思っているもので、前者はそのタイトルや映画のイメージが悪いのでちょっとさけているという感じで、後者はタイミングを…

「角鹿の蟹」−稲垣達郎−

稲垣達郎は1901年福井県生まれの。大学時代には同人誌に参加したり演劇活動を行っていたが、後に母校の早稲田大学にて教職に就き森鴎外を軸に日本近代文学についての研究を主に行った人。「作家の肖像」「夏目漱石」「森鴎外の歴史小説」などの著作、「森鴎…

「KAWADE夢ムック 山口瞳」

去年、発売されたときは「絶対に買わないぞ」と思っていた本。特集がいいといって雑誌やムック本を簡単に買っていると、いつのまにかそういう本がたまってしまって置き場に困ってしまうのが目に見えてるから。そうは思いつつも本屋で久しぶりに見かけたので…

「丘の明り」−庄野潤三−

庄野潤三の本は好きだけれどどうも読んでいると個人的につらい気分になるので、読まないようにしているのだが、帯に永井龍男の推薦文が書かれていたのを見てつい買ってしまった。 電車の中で夫婦者と小さい男の子を連れた母親が話している内容をスケッチした…

「ゼラニウム」−堀江敏幸−

台風が近づいているせいで今週も週末は雨が降ったり止んだり、という天気。2日続けて近所から出ませんでした。 ほんとは巣鴨の三百人劇場でやっている「進め!ジャガーズ 敵前上陸」を観に行こうと思っていたんですけど、朝起きてカーテンを開けた途端そう…

「新潮日本文学アルバム 吉田健一」

先日、特に目的もなく「吉田健一」や「永井龍男」「稲垣達郎」「小沼丹」といった作家の名前で検索しては、本の好きそうな人のホームページを眺めていたら、小西康陽が吉田健一について書いた文章が紹介されていて、それが「これは恋ではない」にも収録され…

「井伏鱒二 弥次郎衛 ななかまど」−木山捷平−

台風が近づいてきているため、今週はどうやら雨降りの週末になりそうだったので、土曜日は、雨が降り出す午前中から自転車で荻窪に出て電車で高円寺へ。 高円寺の駅前はどこからか祭りの音がしたり、なにやらやぐら組み立てられていたりそこいらじゅうに紅白…

「大人のしつけ 紳士のやせがまん」−高橋義孝−

ドイツ文学なんていままで興味を持ったことがなく、思い浮かぶ作家といえばトーマス・マンとかヘッセ、カフカなどの学校で代表作を覚えさせられそうな作家ばかり。現代の作家なんてほとんど知らない。あっケストナーは大好きですね。 かといって、フランス文…

「西瓜糖の日々」−リチャード・ブローディガン−

ブローディガンの小説は短い文章の集まりからその隙間から浮かび上がってくるさまざまな解釈や想像が、人それぞれそして読むたびに違ってくるところが好き。この本もまたいつか読み返すときが来るだろう。何冊かあるブローディガンの本をいまだに手放せない…

「しあわせ かくてありけり」−野口富士男−

「わが荷風」という永井荷風論も出している野口富士男が昭和52年、66歳の頃に書いた自伝的小説。冒頭近くで主人公、夏夫の記憶の一番はじめにあるという、赤坂御所と豊川稲荷の間を入った九郎九坂、赤坂見附から清水谷公園あたり、赤坂の外堀通りと一ツ木通…

「おいしいコーヒーをいれるために」−中川ちえ−

コーヒーのいれかたなんて言うとどうもものすごい器具に囲まれてしかめ面をした喫茶店のマスターやカウンターに座ってしたり顔で「コーヒーは○○○に限るね」とか「△△△と◇◇◇を●対■でブレンドしたものが一番」なんて言っている親父の顔が浮かんだり、コーヒーに…

「川釣り」−井伏鱒二−

私の釣り経験といえば小学校の頃に相模川に行ったときとうちの母方の田舎の河津にいったとき・・・・あとは何回か釣り堀に行ったっけ?そんなもの。 井伏鱒二の随筆は阿佐ヶ谷文士の中心人物としてずっと読みたいと思っていて探してはいるのだけれど、戦後す…

「文房具56話」−串田孫一−

タイトルで分かるように串田孫一が、帳面、万年筆、封筒、ペーパーナイフ、虫眼鏡・・・・など自分が愛用している文房具について語った本。書かれている文房具の絵や写真が添えてあればいいのにと思う。最後の方の章で、戦時中に物資不足で文房具も不自由に…