2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「久保田万太郎」−戸板康二−

前から気にはなっているのだけれど、なかなか作品を読むきっかけを作れずにいるのは、単に私が演劇や歌舞伎に詳しくないからという理由で、かといって「ちょっといい話」のシリーズから読み始めるのもちょっと・・・・と思ってしまう。結局、どれから読んで…

「昨日の會」−井伏鱒二−

まず「昨日の會」という題名がいい。「會」が「会」ではないところもいい(昭和36年発行、時代的にはまだ普通に「會」が使われていた時期なのだろうか?)。特に洒落ているとか、独特の言葉遣いをしているといったこともないので、なにがどういいのか、はっ…

「ZERO」−Pat Schleger−

京都に行ったときには、必ずと言っていいほど恵文社に行く。 というか、もっといろいろ個性的な本屋があるのは分かっているけれど、わざわざ京都まで来て本屋(古本屋)にいってもなぁ、という気分もある。一人じゃない、ってこともある。恵文社も正直に言っ…

「残光のなかで」−山田稔−

先日書いた京都に持っていくために探していた本。山田稔が過去に発表した作品からのアンソロジィなので、それぞれの作品を読んでいくうちに重なりが出てしまうだろうけれど、とりあえず山田稔の略歴と作品の一覧を確認しておこうと思って・・・・。 さっそく…

「もののはずみ」−堀江敏幸−

先週のはなし。普段それほど本を買い込んでおくほうではないけれど、ときには「読む本がたまって、しばらく古本屋に行かなくていいな」、ということもあって、そういうときは早く次の本を読みたくなったり、今読んでいる本をもう少しゆっくり読もう、なんて…

「百叩き」−小島政二郎−

「百叩き」とは、随筆の題名としては少し似つかわしくと思うかもしれない。江戸時代に行われて刑罰を、今ではすこし滑稽でノンビリしていると言い、「なんの権力も持たない我々が悪い奴を捕まえてきて、さも権力を持っているような顔をして、そいつを百叩き…

「風のない日々」−野口富士男−

まったく救いようのない、やりきれない気持ちにさせられる物語なのだけれど、読み終わって思い返してみると、私生児という主人公の生い立ちや、血のつながりのない姉たち(とその夫たち)の自分では主人公を思いやっているつもりの悪意のかけらもない押しつ…

「早稲田の森」−井伏鱒二−

井伏鱒二は生涯にどのくらいの本を出しているのだろう。文庫本で読めるものだけでも読んでおきたい、と思って、文庫についてはリストを作ってみたりしていたのだけど、いつの間にか単行本を買うようになってしまった。この本もそうですが、井伏鱒二の単行本…

「山口瞳の人生作法」−山口瞳−

生前、交流があった多くの人たちに、死後これほど愛情を持って語られる作家というのも例がないんじゃないだろうか。担当した編集者、作家仲間から行きつけの飲み屋の主人、近所の住民・・・・など、誰もが機会を与えられれば(いや与えられなくても?)懐か…

「旅のなかの旅」−山田稔−

この本は、著者が日本語教師として二年間パリに滞在したおりに、ギリシアやモロッコ、スコットランドに赴いた際の紀行文。予約などせず、ショルダーバッグひとつ肩にかけ、Cランクのホテルでその不便さを楽しむ。そして「旅のなかの平凡な日常、そしてその日…