2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「田中小実昌エッセイ・コレクション[5] コトバ」−田中小実昌−

最近、なんとなくバスで通勤するようにしている。ときどき時間がかかったりもするけれど、乗り換えもないし、遅刻ぎりぎりに会社に行くわけではないのでかなり楽だったりする。暖かくなってきたからバス停でバスを待っている時間もつらくない。 バスの中では…

「下駄にふる雨/月桂樹/赤い靴下」−木山捷平−

木山捷平はいい。木山捷平はおもしろい。としか言いようがないような気がする。なんやかんやと理屈をこねてみてもしょうがない、静かに繰り返して読む、そんな作家だと思う。いや、私の語彙が足りないだけなんですけどね・・・・。ようやく暖かくなってきて、気…

「やっさもっさ」−獅子文六−

「てんやわんや」「自由学校」に続く終戦三部作の三作目。戦後米軍が進駐して一時活況を呈するが、その進駐軍が横浜を引き上げるという時期の横浜、進駐軍の兵士との混血児のための慈善養護施設「双葉園」が舞台となっている。その元財閥の未亡人が設立した…

「草のいのちを 高見順短編名作集」−高見順−

ここのところ新しい出会いもなくちょっと倦怠期。世の中には、もっとおもしろい本や音楽があるのだろうなぁ。いや、この高見順の本がつまらない、というわけではないけれど、初めて小沼丹の本を読んで、いきおい文芸文庫をそろえてみたり、山口瞳の文庫本を…

「ニセ札つかいの手記」−武田泰淳−

表題の“ニセ札つかい”は、文字どおり“ニセ札つかい”であって、ニセ札を製造しているわけではない。、主人公は、源さんという正体不明の男からニセ札を渡され、使ったらその半分(つまり釣り銭)を渡している。ギター弾きという職業を持ち、独身の主人公は、…

「海揚がり」−井伏鱒二−

というわけで、井伏鱒二の「海揚がり」を読む。表題は、瀬戸内海に沈んだ骨董品を引き揚げる仲間に入らないか、と誘われる話で、このほかに徴用中の戦死した戦友のことを書いた「ブキテマ三叉路と柳重徳のこと」「徴用時代の堺誠一郎」、木山捷平、上林暁に…

「聖ヨハネ病院にて」−上林暁−

「私小説というのは関わり合う作家たちの作品を全部合わせて、一つの壮大でかつミニマムな作品として成立しているのでは」・・・・なんてことを書いたばかりだけれど、尾崎一雄、庄野潤三、小山清、上林暁と続くとちょっとお腹いっぱい。たまには違う系統の本を…

「カヌー犬・ガク写真集 しあわせな日々」−野田知佑−

初めてあった人に「カヌー犬ブックスという古本屋をやってます」という自己紹介をすると、たいていの場合「なんでカヌー犬?」と言われます。そんなときはとりあえず「本名がガクなんで」と答えているのですが、最近は分かってくれる人が少ない。昔は逆に「…

「昔・東京の町の売り声」−安藤鶴夫−

ニッポン放送で放送されたラジオエッセイを活字として起こした本。なので、落語の一場面や豆腐屋、納豆屋などの売り声など、安藤鶴夫以外の人の声が入るところが区切られていたりして、どことなく台本にちかい。本では、それらの売り声が直接伝わらないこと…