「かきつばた・無心状」−井伏鱒二−

「無心状」については、ちょっと前に単行本で読んだのでここにも書きましたが、ここに収録されている作品とそれほど重なっているわけではない。解説を小沼丹が書いているというだけで私にとってはうれしい。積極的に探しているわけではなかったせいもあり、なかなか手に入れない「清水町先生」を早く読みたくなりました。

その解説で言及されているように、太宰治の死について書かれた「おんなごころ」が出色。これを読んでいると、気の弱い優しい青年という太宰治像が浮かび上がってきます。30代になって太宰を読むってのもどうかと思うので、実際に作品を読むことはないと思うけど。私は高校の時に学校で「人間失格」の感想文を書かされて以来、どうも太宰治を好きになれないのだ。ほかの作品は、井伏鱒二らしく飄々とした雰囲気の随筆なのかフィクションなのかよくつかめない作品が並んでます。戦争時の、しかも従軍の話でさえ、どこかユーモアが漂っているところがこの人のすごいところ、というか持って生まれた人柄なのか。わかりませんが・・・・。