「丘の明り」−庄野潤三−

庄野潤三の本は好きだけれどどうも読んでいると個人的につらい気分になるので、読まないようにしているのだが、帯に永井龍男の推薦文が書かれていたのを見てつい買ってしまった。
電車の中で夫婦者と小さい男の子を連れた母親が話している内容をスケッチしたようなものから、戦時中に中国を旅行した時のエピソードをまとめたものなど、1963年から1967年に発表された短編を収録した作品集で、庄野潤三としてはヴァラエティに富んでいる(という言い方は似合わないけど)といえるかもしれません。
どれも日常的な断片を紡ぎ合わせたような穏やかで静かな作品で、こういう作品を読んでみると機会があれば60年代くらいまでの作品は読んでみようかな、と思ってしまう。

その庄野潤三が監修を手がけている小沼丹の全集が今、未知谷という出版社から刊行されている。全4巻で現在の時点で3巻まで出ている。
私は一人の作家の全集なんて買ったこともないけれど、小沼丹の本は講談社学芸文庫でしかほとんど手に入らないだけにちょっと欲しい、と思って調べてみたら、A5判の752ページもあるかなり豪華な、見た目には辞典のような本で、1冊12000円もしました。う〓ん、ちょっと私には無理か。いやたまには清水の舞台から飛び込んでみるか!?見るべきか!?