「ニセ札つかいの手記」−武田泰淳−

表題の“ニセ札つかい”は、文字どおり“ニセ札つかい”であって、ニセ札を製造しているわけではない。、主人公は、源さんという正体不明の男からニセ札を渡され、使ったらその半分(つまり釣り銭)を渡している。ギター弾きという職業を持ち、独身の主人公は、特にお金に困っているわけではないが、不思議な魅力を持つ源さんと、ニセ札を媒介としての断ちがたい連帯感を感じ、それに加え源さんが、ニセ札を使う相手に自分を選んでくれたことに喜びを感じている。しかしそのニセ札も最後の一枚となり、源さんは最後の一枚を主人公に渡して、いなくなってしまう。残された主人公は、源さんとの“特別な”つながりを確認したくて、そのニセ札を警察に渡すが・・・・。というなんだか不思議なストーリー。
“ホンモノ”と“ニセモノ”の境目、そしてそれによって明らかにある、実際にそこに存在し、その存在に対して価値がつけられる“モノ”と、信用によって価値がつけられる“お金”の根本的な違い・・・・といったことが、主人公を含めた飲み屋の店員・客などによって、軽妙に語られていくのだが、それが妙に正論だったりするところがいい。武田泰淳は、なんだか作品によって雰囲気がぜんぜん違うような気がします。というほど読んでいませんが・・・・。

そろそろ告知しなくちゃなぁ、と思いつつ、すっかり書きそびれていましたが、4月29日に行われる不忍ブックストリート一箱古本市に参加します。詳しいことは、不忍ブックストリートの公式ホームページを見ていただくとして、簡単に説明すると、谷中、根津、千駄木の中心を、不忍通り周辺のエリアの本屋さん、雑貨店、ギャラリー、カフェなどの軒先を借りて、100人の出品者が一箱ずつ持ち寄り青空古本市を開くというもの。カヌー犬ブックスは、谷根千工房の前にお店を出すことになりました。100名も参加するので、店主の一覧を見ているだけで、自分が出ることも忘れて、なんだかわくわくしてしまいます。売る本より買う本の方が多くなってしまったらどうしよう。
で、それに合わせて、と言うわけではないけれど、カヌー犬ブックスのカードも作りました。パリで撮った写真をそのまま使っただけのものなのですが、今週末発送分くらいから同封する予定なのでお楽しみに。ついでに1月に作ったしおりも、少し紙を厚くして使いやすくしました。この辺のおまけもページにアップしておきたいんですけどね。