「クレイジー・キッズ・フード!」−スティーブ・ローダン/ダン・グ

canoe-ken2005-01-31

このアイコン・シリーズは、有名な写真家からビザールなもの、レトロなもの・・・・など、たくさん出ていて、中には「トラベル広告」や「アメリカン・アドバタイジング60s」など、ちょっとひかれるものもあるにはある。でも、すぐに折れそうなソフトカバーの感じ気になったり、本のサイズが物足りなかったりしてどうも買う気にはなれない。ときどき洋書バーゲンなどでまとまって売られていたりするけれど、そういうときに限って気になるタイトルがなかったりする。逆にこの「クレイジー・キッズ・フード!」は、その本自体の安っぽさが内容と合っている気がする、というのは私の単なる“気持ち”だけかな。

お菓子のパッケージで使われたキャラクターを集めたこの本を見ていると、お菓子という安価な商品と今から見るとおおざっぱな、荒い印刷がぴったりと合っていて、ものすごくその荒さの隙間から、“夢”や“希望”がわき出てくるような気がする。高画質や精密さを突き詰めていくと、印刷としてはきれいだけれど、もともとお菓子のキャラクターというおおざっぱなものだけに、細かければ細かいほど“あら”が浮き出てしまって、加えて想像力の入り込み余地がなくなってしまって、どこか寂しい、つまらないものになってしまうのだろう。なんてことを、この本をめくっていて考えているわけでもなく、ただ「かわいいな」とか「これコピーしてどっかで使おうかな」なんて思ってたりする。

話は変わりますが、東京国立近代美術館で「河野鷹思のグラフィック・デザイン―都会とユーモア」が2月27日まで開催されている。河野鷹思は、松竹キネマの宣伝ポスターから始まって、雑誌「NIPPON」の制作や、「日宣美(日本宣伝美術会)展」への参加など、戦前から活躍するグラフィックデザイナーで、展覧会では彼が手がけたポスターや雑誌の表紙、挿絵などが展示されてる。で、日本に限らずほかのデザイナーの作品を含めて、見ていていつも思うのだけれど、戦前はデザインというより、イラストに近かったり、印刷というより版画に近いようなものが、戦後、1950年代から1960年にかけて印刷技術が発達するに従って、構成や色づかいがはっきりと洗練される。この変化はどんなデザイナーの作品を見てもすごいなぁ、と思う。

ひとつの技術を使ったものでも、一方では今から見るとその荒さによって商品が引き立ち、一方では前の時代に比べて緻密になったせいで、デザイナーの意識や手法まで影響と与える、それは単に、見方や距離によって感じる印象が違だけかもしれないけれど、なんだか不思議なことのような気がしますね。