「澪標・落日の光景」−外村繁−

外村繁も阿佐ヶ谷文士と呼ばれた作家のひとり。井伏鱒二の「荻窪風土記」では太宰治に次いで、青柳瑞穂と並んで登場回数が多いとのこと(私が実際に数えたわけではありませんが)。
前妻の死を扱った作品や自身の性的な告白、夫婦ともに癌の治療をしながら静かに迫りくる死について考える日々をつづったような作品など後期の短編が4編収録されている。はっきりいって暗い・つらい状況ばかりなのだが、それでもどこか穏やかな雰囲気が漂っているのはなぜだろう。今ではすっかり風景も変わってしまっただろう阿佐ヶ谷の駅前ロータリーの片隅で夕暮れ時、一人の老人がたたずみ歩いていく様子が浮かんでくる。
ほかにアマゾンで調べてみたら「草筏」「筏」といった本も手に入りやすいみたいなので見つけたら買っておきたいと思っている。そしてあまり買いたくはないとは言いつつも講談社学芸文庫の目録が欲しいこの頃です。

そういえば目録をもらわなくなったのはいつごろからか。昔は毎年新しいものが出るたびに本屋さんで文庫本の目録をもらってきて、読みたい本をチェックしたり、読む本がなくなると電車の中で目録読んでました。普段本屋では見かけないけれどこんな本が文庫になってたんだ、なんていう発見があってけっこう楽しいんですけどね。今、その頃の目録を持っていたら便利なのではないかと思ったりもするけれど、実際はじゃまなだけかもしれない。