「一個・その他」−永井龍男−

永井龍男は新聞の隅に見つけたなにげない小さな事件の記事をスクラップにして置いて、その事件を何年もかけて少しずつ頭の中でふくらませて一つの短編小説を作るという。
そのせいか文章から醸し出される雰囲気は彼の日常生活を描いた随筆と同じような感じなのに、物語はどこか現実から浮遊していて、かといって、物語そのもののおもしろさを楽しむというスタイルでもなくてそこはかなとなく奇妙な味がある。その辺が短編の名手といわれる所以だろうか。

先日、ブックオフで本を探していたら中学生くらいの男の子2人組がなにやらリストを片手に「おまえ『坊っちゃん』にしろよ。俺、『猫』にするからさ」「でも『坊っちゃん』100円じゃないよ」なんて言い合ってました。どうやら夏休みの宿題の読書感想文のための本を選んでいるらしい。100円で売っているところから探しているところがいいね。しかも私も本屋に入ると長い方だけれど、彼らは私が来たときにすでにいて出るときもまだ悩んでました。
それにしても夏休みの宿題って懐かしい。小冊子みたいな問題集だとか、アイデア貯金箱だとか、なんかのポスターだったりとか(ちなみ私は絵を描くのが嫌いだったので毎年これが最後まで残ってました)、あと書道コンクールに出す作品だとか・・・・。