「怡吾庵酔語」−里見トン−

自分の生涯について振り返り語った本。「話し言葉で読みやすいなぁ」と思っていたら本当に里見トンがしゃべった言葉を速記して文字に起こした後、自身によって赤を入れるという方法で書かれたということ。よく考えれば、里見トンは1888年に生まれて1983年に亡くなっているのでこの本が出た1972年ではすでに80歳を越えてるんですよね。子供の頃、お盆などで田舎に帰ったときに縁側でお菓子かなんか食べながらおじいさんの昔話を聞いているって感じです。なんて言ったら失礼か!

ところで里見トンだけに限らず、こういう回想録を読んでると、それぞれの交友関係の中で登場人物たちの年齢差がどのくらいなのかとても気になってきます。話だけ聞いているとたとえば10代の頃に出会った人に関しては5歳くらい上だともうものすごい先輩で、敬語を使ったりするけれど、30歳を過ぎてから出会った人に対しては10歳くらいの年齢差はあまり関係なく会話していたりするし、書く人によって年齢差を気にする人と気にしない人、あるいは師弟関係や尊敬する人、昔からの友達・・・・などで口調や態度が変わってくるので、いろいろな人の回想録を読んでいくとどんどん混乱してくるのです。
昔習った国語の教科書みたいに代表作が出た年代をとって大正時代の作家とか戦前の作家なんて言っても本人はその後も生きているわけだし、そのあいだにいろいろ本を出していたりするわけですよ、なので、今度、自分の好きな作家についての年表を作ってみるのもいいかも、なんて思ったりしてます。その作品が何歳の時に書かれたかということや、どういう順番で作品が発表されていったかというのも気になるし。
いやほんとにそういうこと全然知らない自分に気がつかされます。