「町からはじめて、旅へ」−片岡義男−

本腰を入れて片岡義男のエッセイを読んでみようと思っているのだが意外と古本屋さんで見かけることがない。いやそもそも新刊の本屋さんでも片岡義男のコーナーってなかったりします。もう過去の人ということなのだろうか?角川の文庫はブックオフにいっぱい並んでいるのになぁ。

「町からはじめて、旅へ」は1976年に出された本で、「流行通信」や「シティロード」「宝島」といった雑誌に掲載された文章をまとめたもの。だからというわけではないが片岡義男の文章としてはかなり軽い、理屈っぽくないなんじゃないだろうか。
ちなみにこの直前にあの「スローなブギにしてくれ」が角川書店から発売されていて、この後「彼のオートバイ、彼女の島」「人生は野菜スープ」・・・・と続いていくわけです。(「町からはじめて、旅へ」の発売は1976年4月、「スローなブギにしてくれ」が3月)

全体的に「アメリカには本物の文化があり、日本にはない」といった論調が続くので、「日本にあった本物の文化を、まるで駐留軍が日本家屋に白いペンキを塗りたくったように、アメリカが偽物で覆い尽くしてしまった」と思っている私にはちょっとつらい。
でもそれは片岡義男の文章だけでなくその頃の雑誌などに書かれた文章は少なからずそういう雰囲気を持っているので片岡義男本人だけの問題ではない。しかもそういう文章をストレートに真に受け止められてしまっていたんだろうな、と思う。だから今だからこそ普通におもしろがってこの本を読んだりできるということもあります。
そういう主張が片岡義男の意図するところだったのかどうかは分からないけれど、どこか「たかが文章」という半分ひいた感じの姿勢が見え隠れしてるような気がするのは私のひいき目なのだろうか。少なくとも「アメリカには本物の文化があるから、日本もその上辺だけを持ってくるのではなく本物に接するべきだ」ということではないと思うが・・・・。