「庭の砂場」−山口瞳−

珍しくストックして置いた本がなくなってしまったので(実を言えばほかに山口瞳の本がストックしてあるのだが・・・・)、読んでみたけれど、やっぱり読まなきゃ良かった。めちゃくちゃ落ち込みました。もう10代じゃないんだから本を読んで考え込んだり落ち込んだりしたくないです。この作品が悪いんじゃないけどね。もう少し余裕のある時に読まなきゃいけない本です(多分、「血族」や「家族」、「人殺し」といった作品も私にとってはそうなんだろうな)。

この作品は、自分の中の“負”の部分を追求したという山口瞳の最後の短編集。くわしいことは書かないけれど、自身で「最後の短編集になるはずだ」と宣言した作品で、ここまで徹底的に、そして冷静にそれまでの人生、そして(10代の多感な頃と太平洋戦争が重なってしまったという)運命に対しての嫌悪や憎しみ、後悔・・・・を書けるものなのだろうか。60歳過ぎてからもそのような思いを抱えたまま残りの人生を過ごすということを考えるだけで私は恐ろしい気分になってしまう。私は鎌倉で川沿いの小さな家で奥さんと二人で暮らした永井龍男のようにもう少し平穏に過ごしたい。

そんなことを言いつつも一晩寝て朝起きて晴れていたら気分がいいもので、ちょっとでも早く起きて家の中をきれいにして「今日はどこに行こうか」なんて思ってしまう。いつもと変わらず中央線沿線をうろうろするだけでも、こんな暖かい春の日は気分がよくなるってもの。