「東京の横町」-永井龍男-

正直言って永井龍男について知っていることはほとんどありません。この間、小津安二郎展を鎌倉文学館に見に行ったときにちょっと展示を見たくらい。奥付を見て鎌倉文学館の初代館長だったということもはじめて知りました。
この本は1980年代に日経新聞に連載した「私の履歴書」を中心にまとめたもの。幼少期から前後文藝春秋を退社して作家としてやっていくまでの経歴が書かれています。

ここでは文藝春秋の社長である菊池寛はもちろんのこと、さすがにいろいろな人が登場してきます。なかでも川端康成小林秀雄、里見トンなど鎌倉に住む人々が出てくるとなんだかわくわくしてきます。先日読んだ山口瞳は隣に川端康成が住んでいたという話を書いていたし、井伏鱒二の本には小林秀雄が出てきたり、小沼丹の随筆には井伏鱒二が出てきて・・・・そうやっていろいろな本を読みながら戦前から戦後にかけての作家たちの交友関係が自分の頭の中でできあがって、そして動いていく感じがとても楽しい。

これ一冊読んでどうこういう筋合いではないので次回はちゃんとした小説を読んでみたいです。