「旅の時間」-吉田健一-

旅行に行って帰ってきてすぐの頃は、旅の疲れがたまってしまったり、急に日常に戻ったせいで慌ただしかったりして「当分、旅行なんて行かないだろうな」と思ってしまいますが、1カ月くらい経って次第に落ち着いてくると急に旅行先のことを思い出しだしてなんだかそわそわしてしまったりして、そんなときに山口瞳の「酔いどれ紀行」やこんな本を読んだりするともう夏休みも近いし国内でもいいからどこかに行きたい、なんて気分になってしまいます。

さてこの本は旅をテーマにした小説集。飛行機の中の出来事からフランスやイギリスを行った国々、そして大阪や京都をいった土地を舞台に話が展開し、それぞれの作品の中でその土地の評論が繰り広げられるという形になっています。でも大抵登場人物はそこで飲んでいるだけですが・・・・。

ただ吉田健一の小説のおもしろいところは、登場人物飲んでさまざまなことを語り合っているだけだけれど、ストーリーとしては実は現実離れしていて、現実とも非現実ともつかないような世界が広がっているというところで、ここが彼の随筆や評論との一番大きな違いかもしれません。