「コルシカ書店の仲間たち」-須賀敦子-

須賀敦子のエッセイはアントニオ・タブツキの本に夢中になっていた頃からずっと読んでみたかったのだけど、書評などで「凛とした詩情溢れる文章が紡ぎ出す」とか「作者が熟成させた言葉の優雅な果実を、いまは心ゆくまで享受したい」なんていう文章を見てしまうと、どうも気恥ずかしいような気がしてなかなか手が出せないままになってしまってました。

1950年代〓60年代にかけて作者がイタリア留学中に、コルシア・デイ・セルヴィ書店という本屋・出版社で出会った人々を30年後に描いたこの本は、やはりどこかノスタルジックで「あの頃は良かったね」的な雰囲気は免れないけれど、30年経ったことで逆にそれぞれの生き方や性格、考え方などが客観的に書かれてもいて、そこがこの本を救いになっていると言えるかもしれません。