八王子の古本屋から吉祥寺のHun Lahunまで

canoe-ken2008-04-29

日曜、八王子の古本屋さんで「大陸の細道」を買ったので、講談社文芸文庫木山捷平の本も「木山捷平全詩集」を残すのみです。と思ったら、「氏神さま・春雨・耳学問」もなかった。なんとなく読んだ気がして買わなかったのだけれど、一緒に買っておけばよかった。何年か前までは、ちょっと大きな本屋さんなら普通に並んでいたのに、気がついたらなくなっていて、しかも古本屋さんでもぜんぜん見かけないので、なんとなく悔しい。この本もちょっと背が焼けている古本だけれど、値段は定価だったしね‥‥。
レジのところで店員のおじさんが「おっこれは定価でつけたんだった〜」言うので、自分で付けたんでしょ、と思いながら、「木山捷平の本って、講談社文芸文庫でもなかなか出てこないですよねぇ」なんて答えたら、「いや、昨日単行本も入ったよ、その辺にあるはず‥‥」と言うので、いちおうお金を払ったあとに見に行ったら4000円だった〜。4000円の本は買えないな〜。
この「長春五馬路」は、比較的最近文庫になったばかりだし、敗戦直後の満州での話なので、まぁいつか買おうという感じだったのだけれど、たまたま安い値段で単行本を見つけたので、つい買ってしまいました。でも安いだけあって、函はかなり焼けていて、背のタイトルとかまったく読めません。本自体はキレイなんだけど‥‥。
前述したように敗戦直後の満州で日本に帰ることもできず、知り合いの朝鮮人の配下でボロ屋をやって生計を立てる主人公の日常を描いた作品。太平洋戦争が終わったといっても、中国では、ソビエト軍が南下し、また中共軍と国府軍による戦闘が行われていたりして、戦況は不安定なのだが、主人公の生活は飄々としてつかみどころがなく、ある意味軽やかで、どこか放浪小説のような雰囲気さえ漂っている。かなり厳しい現実を目の前にし、それを描きながらも、どこか現実離れをした浮遊感がたまらない(読みながらよく考えると、かなりきわどいことを書いているときもある)。こんな風に人生を捉えることができるということ自体がすごいことだと思う。

さて、八王子の古本屋から始まって、中央線をうろうろしたあと、夜は、吉祥寺にのHun Lahunをいうカフェでやっている「One plus One」というイベントへ。日曜の夜でも、次の日一日働いたらお休みと思うと、なんだか気がゆるむ。「One plus One」は、イラストレーターの原子高志さんと、井の頭通りにある雑貨屋「Round About」の小林くん、昔「Uppers!」というイベントやっていたイツキくんの3人がやっている基本的にはモッズ〜ジャズ系のマニアックな音楽がかかるイベント。私にはジャケットを見てもぜんぜんわからないレコードばかりなのだけれど、それをBGMにしながら、お酒を飲んだりごはんを食べたりするだけで楽しい(Hun Lahunのごはんはおいしいし)。最近会っていなかった友だちが、たまたま遊びに来てたりするのもうれしい。
というか、DJのかけているレコードをチェックして、自分でも探してみるという、意欲がもうまったくないので、個人的にはかかっているレコードよりも、その場の雰囲気の方が重要かも。でもときどき会話についていけない時もあるけどね。いや、小さいながらも古本屋をやっているくせに、自分で読む本に4000円はな〜なんて、こっちは思っているのに、普通に1万、2万のシングル盤を買った話とかしてるんだもん。