「居心地のいい店」−小島政二郎−

canoe-ken2005-07-17

私が勤めている会社の本社は名古屋にあるので、東京にいる人でも、単身赴任してきた人や週に3日だけ東京に来て残りを名古屋で仕事をするなんて人がいたりする。私は、営業でもないので、基本的にテレビ会議とメールでやりとりするだけで名古屋に行くことはほとんどないのだけれど、久しぶりに名古屋にいくとなるとちょっとウキウキしてしまう。特に今回は説明会と懇談会だけなので準備したりするものもないし、頭のなかはちょっと早めに行ってどこでお茶しようか、ということと、新幹線の中でどんな本を読もうかということだけだったりする。
片岡義男は新幹線の中で本を読むのが好きで、本を読むために新幹線で京都に行って帰ってきてもいいくらいだ、なんてことをどこかに書いている。逆に青柳瑞穂は、電車に乗って週刊誌などを読むのは一番もったいことで、車窓を流れる景色をみるのが一番贅沢なことだ、と言っているし、新幹線に乗ったら、行きは右に、帰りは左に富士山を見ないと気がすまない、なんてことを誰だったか忘れたけれど、書いている人もいたと思う。私としては片岡義男ほどでないにしても新幹線の中で本を読むのは好きだ。普通の電車よりも席は座り心地がいいし、ちょっと本に飽きたら窓の外を見たり、コーヒーを買ったりできるし、で、読み終わった頃に目的に着いていたりしたらうれしい。名古屋まで約一時間半。往復で3時間。家から品川まで往復で2時間弱。一日で5時間も読書時間にあてられることなんてめったにないわけで。・・・・と、思っていたのに、結局新幹線の中ではほとんど寝てしまって本を読むことはできず。ちなみに会場の近くにあったモンドカフェというところで、お茶しました。

その新幹線の中で読んだのが、この小島政二郎の「居心地のいい店」。小島政二郎で「居心地のいい店」なんていう題名がついていると、食べもの屋の話かな、と思ってしまいますが、そうではなくて「この本が(居心地のいい)そういう家でありたいと思っている」という気持ちを込めてつけられたタイトルらしく。基本的に身辺雑記のような内容となっている。その中でも銀座の風月堂の主人を描いた文章はその時代の職人(料理人)たちの気質が浮き彫りにされていておもしろいものになっている。