「火事息子」−久保田万太郎−

canoe-ken2005-02-09

このところ会社の行き帰りにちょっと厚い単行本を読んでいるので、混み合っている通勤電車の中で片手はつり革につかまってもう片方の手で本を持って読んでいると、たった20分くらいのことなのに腕が痛くなったりしてしまう。単に私の筋力がないだけなんですけどね。でも週末くらいは荷物を軽くしたいし、歩き回ってもじゃまにならないような本が読みたいし、そもそもそれが長編ではなくて随筆をまとめたものなので、いくら好きな作家のものといえども気分的に中だるみしてきたので、ときどき違う本を間にはさむようにした。前にも書いたけれど、今、私の本棚には読んでいない本が意外とあるし。
これは、前に読んだ「ペケさらんぱん」と一緒にネットで頼んだ本。もう一冊、今日出海の本も注文したのですが、こちらはまだ未読。週末はもちろん、会社から早く帰ったときなど、こんなに古本屋さんに行っててもなかなか出会えない本というのはあるもので、まだまだ修行足りないということでしょうか。なんの修行かわかりませんが・・・・。

さて、万太郎の幼馴染み、鰻屋「重箱」の主人をモデルにしたこの作品、主人公がこれまでの生涯やお店の変遷、東京の変化などについて語っていくという形式なのですが、語り口のテンポがよく、なんだか落語を聞いているような、あるいは久保田万太郎本人に話を聞いている気分になります。借金を抱えても、地震で家が壊れても、東京から逃げる羽目になっても・・・・深刻な感じはまったくなく、「ええぃ、しょうがねぇなぁ」ぐらいのいきおいで駆け抜けている感じが爽快。そしてそういう状況に陥った主人公を、昔、父親が主人公に世話になってという理由で、その息子が主人公を助けたりと、いつかの、どこかのつながりで助ける周りの人たちとのやりとりも爽快。