「ケン・ローチの映画 1969-2006」と「タナカカツキの太郎ビーム展」

canoe-ken2007-07-16

台風の通り過ぎた3連休の最終日にユーロスペースケン・ローチの「ナビゲーター ある鉄道員の物語」を観に行ってきました。「ケン・ローチの映画 1969-2006」と題された特集で、14日から27日まで、「ケス」「マイ・ネーム・イズ・ジョー」「ブレッド&ローズ」「ナビゲーター ある鉄道員の物語」「SWEET SIXTEEN」「やさしくキスをして」「麦の穂をゆらす風」「明日へのチケット」の7作品が上映されています。“1969-”というわりには、「ケス」以外は最近の作品ばかりなのがちょっと不満なのだけれど、次にいつ見れるかわからないので、これを期に観ていない作品を観ておきたい。でも期間も短いしどうだろう。ちなみに観ていないのは「ブレッド&ローズ」「ナビゲーター ある鉄道員の物語」「明日へのチケット」の3作品ですね。もう少し長い期間で上映されるんだったら、「マイ・ネーム・イズ・ジョー」をもう一回観たいところなんですが‥‥。
「ナビゲーター ある鉄道員の物語」は、イギリスの鉄道が民営化され鉄道会社の再編化されることで右往左往する労働者たちの顛末を描いた作品。一緒に働いていた人が違う会社の人となり、ライバル会社の社員としてスパイ扱いを受けたり、効率化という名のもとにリストラが行われ、派遣社員として働かざるえなかったり、派遣社員が多くなるにつれて本来業務を受け持っていた会社に仕事が回らずに経営が悪化していく‥‥など、深刻なテーマを正面から取り上げているにもかかわらず単なるドキュメンタリー映画とならないのは、深刻でありながら登場人物たちのどこか滑稽なやりとりや、体制への批判だけではなく、労働者たちへの皮肉もときおり出てきたりするからか。まぁその辺は、この作品だけでなくケン・ローチのどの作品にもいえることだけど‥‥。目先の少しの利益のために(それだけではないんだけれど)会社を辞め、明日仕事があるかどうかもわからず、けがなどの対する保証もなく、道具や通勤費さえも自分で出さなくてはいけない派遣社員として、より過酷な状況で働き出す元鉄道員たちの様子を、冷静に映画を観ていると「なんだかなー」と思ったりしてしまうけれど、実際の自分もあまり変わらなくて、かなり気が滅入ってしまいます。いや、それもこの作品だけでなくケン・ローチのどの作品にもいえることだけど‥‥。

映画が終わった後、ちょっと時間があったので表参道まで足をのばして、岡本太郎記念館でやっている「タナカカツキの太郎ビーム展」を見てきました。タナカカツキによる岡本太郎へのオマージュという趣の展覧会で、スライドなど、うまく岡本太郎の世界とタナカカツキの世界が融合させた展示もあるものの、どちらかというとタナカカツキ色は薄く、太郎寄りの作品が多い。あともう少し展示が多かったらよかったのになぁと思う。場所が場所だけに数を増やすのは難しかったのかもしれませんが、数が多ければもう少しタナカカツキ寄りの作品も展示できただろうに‥‥。