「マリー・アントワネット」と「ジョブ&ベイビー」、女の子の人生ってなんなんだろう?

canoe-ken2007-03-07

普段、野球を見るわけでもなく、草野球に参加するわけでなく、競馬も将棋も麻雀もやらないし、絵も下手、さらに飲みに行けば、たいてい終電間際でサクッと帰ってしまう。そう考えると、趣味・嗜好的には山口瞳とわたしの接点ってまったくないですね。だからこそおもしろく読める、ということもあるのだろうけれど。青柳瑞穂や青山二郎を読んでいるからといって骨董収集の趣味があるわけではなく、内田百けんを読み始めたからといって鉄道好きなわけでもなく、井伏鱒二が好きだからといって釣りに行くわけではない、と同じことですかね。

さて、ちょっと前のことになりますが、ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」を観てきました。ソフィア・コッポラの映画は、「ヴァージン・スーサイド」しか観てなくて、個人的には、スチール写真を含めて、映し出されるシーンの一つ一つや小道具、音楽の使い方など、イメージ的にはわりと好きなのだけれど、ストーリーを語るという意味ではちょっとどうなのかなぁ、という思いこみがあったので、この映画については、ちょっとスケールを広げすぎなのではないか、もっとミニマムなストーリーの方があっているのではないかと思っていて、正直あんまり期待はしてませんでした。でも、実際は、いわゆるベルバラ的な世界でも歴史物語でもなく、純粋に一人の女の子の青春映画としてよかった。
ストーリーを含めて、歴史的な背景、国同士の外交的な駆け引き、さらには旦那のルイ16世を初めとした男性たちの心象やキャラクターなど、余計なものをすべて省いてしまって、マリー・アントワネットとその周りの女の子たちによる贅沢三昧と、恋愛のうわさ話、他愛もないおしゃべり‥‥が描き出されてます。映画の中で一番心に残っているのが、18歳の誕生日に夜通し遊んで、そのあとみんなで朝日を見に行くシーンというのも、ソフィア・コッポラらしい。Gang Of FourやSiouxsie & The Banshees、Adam & The Ants、Bow Wow Wow‥‥など、使われている音楽が音楽なだけに、衣装も18世紀フランスというよりも、1980年代初めのヴィヴィアンのように見えてきたりするし‥‥。

その「マリーアントワネット」が、夢の世界のような青春物語とすれば、その青春の終わり時期の女の子の悩みをストレートに描いたのが、小日向しえ主演の「ジョブ&ベイビー」。結婚間近の主人公が、仕事もしなくちゃいけないけれど勤めている保育園は閉園だし、子どもも生まれるし、彼ははっきりとしないし、そもそもこの仕事が私に向いているのかもわからない‥‥といった感じ。どちらも出てくる男には、まったくスポットが当てられないのは同じか。
「ジョブ&ベイビー」のほうは現実的な分だけ、男のわたしには、「う〜ん?」と思ったり、「女の子はいろいろたいへんだなぁ」なんて思ったり。所詮人ごと?というわけでもないけどさ。舞台初日と言うこともあって、終演後は演出家の赤間麻里子と小日向しえのミニトークショーがあったりしてなかなか楽しかったです。スペシャのプレゼントでチケットが当たったので、まったく予備知識なしで行ったのだけれど、ちょっと得した気分。