「瓦礫の中」「文学の楽しみ」-吉田健一-

相変わらず吉田健一の本ばかり読んでいます。というより高校生の時からいままでアメリカ文学ばかり読んでいた身としては、アメリカ文学に興味を失った今何を読んでいいのかよくわからないだけなんですけどね。ほんとは小沼丹とかも読みたいんだけれど、講談社から出ている文庫以外の本がネットで調べても高いので手に入れることができないし状態。

とは言っても吉田健一はおもしろい。読み始めた頃は食べ物や酒に関するエッセイが好きだったけれど、最近は「本当のような話」や「東京の昔」といった小説が気に入っています。「瓦礫の中」もそんな小説の一つで、戦後まもない東京を舞台にそこで暮らす夫婦の生活を描いています。そして吉田健一のほかの小説と同じように戦後の東京の様子など細部に関しては(多分)かなり現実に近いものを描いているにもかかわらず、そこで暮らしている人々に関してはどこか現実離れした生活を送っていて、なぜかいろいろなところで酒ばかり飲んでいます。